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カルチャー・旅行・試行錯誤

魔法少女になれない私たちは

 

 

オタク文化とか美少女とかについて本を読んで、まどマギを見たので、魔法少女について思ったことを書こうかなあと。

 

先日、プリキュアでついに男の子がプリキュアになりましたね。わたしはプリキュアそこまで詳しくないのですが、女の子向けアニメで男の子が「女の子たちのプリキュア」になったことはやっぱりすごいことだと思います。

ネットでの反響を見る限りは良かったという印象が多いイメージです。わたしも男の子がプリキュアになれること自体はすごくすてきだと思います。「女の子は誰だってプリキュアになれる」時代から、「誰だってプリキュアになれる」時代に変わったのかなと感じました。

 ただ、わたし自身は女の子なのにプリキュアになれない層だったなあと思い出しました。わたしはメチャクチャ夢見がちで、虚構コンテクストに親和性が高い人間なので、現実とフィクションの違いはついていても、だからと言って魔法みたいなことが現実に起きないとも限らないと本気で思っていました。

プリキュアになりたいわけではないですが、それに近い魔法少女になれる日が、ハリーポッターみたいに魔女・魔法使いになるためのおたよりがいつかくるのではと思ってました。こないまま成人しましたね。

 

魔法少女になれなかった私たちが現実で生きて行くには、現実で使える魔法を勉強しなくちゃなりません。変身はできないし、精神と時の部屋もない。必殺技を教えてくれる人はいないし、人生の師に出会えるかどうかは運によるし。

 

意外と、人生の真理とか、生き方みたいなものをいろんなところでいろんな人が教えてくれるんですよね。高校までの教育は、生き方を教えているんだなと大学卒業が見えてきた年になって思い知ります。勉強ができるからどうだ、ということではなく、この社会で生きていくルールとか手段を教えているんですね。私は学級崩壊も経験しているのですが、その時の先生を代表として、今まで自分を教えてくれていた先生には本当に感謝の気持ちしかないです。

 もしかしたらこの世にはチート技が効くということがあって、その技さえ覚えれば人生楽勝なのかもしれない。でも魔法少女になれなかった私には多分、そのチート技なるものが使えません。知っていたとしても使いこなせないでしょう。

しかし、そんな大多数の私たちだからこそできること、使える魔法があるとしたら、それは自分で考えて選んで経験することに尽きるのかなと思います。

 人生哲学とか、人生はこうすればいいとか、いろんな偉人が言っているけど、でもその言葉は言葉にしかすぎないんですよね。自分でわかって、自分の人生で積み上げてきたものだけが血肉を持つ。地味で細やかで果てのない話だなあと思います。その点で、わたしはまだ、借り物の言葉を喋っているだけなのかもしれません。

 

でもそうやって地道に少しずつ積み上げていったものたちが、いつか何かの光を持つと思っています。何かの光を宿すと信じている。その信じているという気持ちが、日常や毎日に魔法をかけてくれるといいなと思います。やっぱり魔法は、人をしあわせにするためにあると思うので。

 

 

魔法の手

 

最後に、わたしの好きな絵本の話をしておこうと思います。いせひでこさんの「ルリユールおじさん」という絵本です。大好きすぎて、エピソードを思う浮かべるだけで泣きそうになるくらいお気に入りのお話です。 

https://www.ehonnavi.net/ehon/11441/%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%8A%E3%81%98%E3%81%95%E3%82%93/

 (リンクは絵本ナビのもの)

 現在フランスに10人ほどしかいない本を手製で治す修理屋のことをルリユールと呼ぶのですが、そのルリユールという職人と植物図鑑を大切にしている女の子のお話です。

 主人公はお気に入りの植物図鑑が壊れてしまい、それをルリユールのところに持っていって直してもらう。ルリユールは主人公の本を直しながら、昔の父の仕事姿を思い出す。ルリユールの父は、少年の頃の彼に「名を残さなくてもいい、いい手を持て、ぼうず」と言葉を残す。

「わたしも魔法の手を持てただろうか」とルリユールは自問する。その答えは、美しく蘇った主人公の植物図鑑が答えてくれる。もうその植物図鑑は、二度と壊れることはなかった。

 絵本の中のルリユールに名前はありません。彼はルリユールおじさんです。ルリユールという職人で、彼はその手を通して本を美しく直しつづけます。その仕事の中で、その繰り返しの中で幾度か優しい魔法が生まれることがある。魔法ってそういうものなのかもと思えるようになりました。

 

就職活動を迎え、出版を志すようになってから、この言葉をよく思い出すようになりました。わたしも、いい手を持てるでしょうか…。